サイエンス・インカレへの道

Vol.3
将来の自分の糧になる
貴重な出会いと刺激

第3回サイエンス・インカレ
文部科学大臣表彰受賞
筑波大学 生命環境学群4年
町洋祐(そりまちようすけ)さん
(所属・学年は第3回サイエンス・インカレ当時のものです)

第1回目からチャレンジし続けた舞台

サイエンス・インカレを初めて知ったのは大学2年生のとき。もともと学内外の様々なプレゼンテーションに出ていたので、研究発表、プレゼンテーションにチャレンジすることに躊躇はなく、得意分野を伸ばしたい希望もあったため、チャンスがあれば何でも出たいと思っていました。文部科学省主催であること、そうそうたる企業がスポンサーに入っていたことも魅力的でした。

所属する研究室の体制によっては、ふだんから自主研究に積極的に取り組むことが容易でない場合もありますが、私は幸いにも自主研究自体にラボの先生の理解があり、微生物学と電気化学を掛け合わせるというテーマを独自で進めていて、構想をいくつか持てていたことは恵まれていたと思います。ただしあくまで課外活動として、空き時間に進めるというスタンスだったので、ラボの仲間にも特に出場を宣言せず、黙々と進めていました。

リスクがある時ほど構想とシミュレーションが鍵

第1回目のチャレンジで「サイエンス・インカレ奨励表彰」と「エア・リキード賞」をいただき、それ以上の賞を狙った第2回で、1日目で敗退というまさかの展開。今度こそはと背水の陣で臨んだ第3回でしたが、実はテーマを設定し着手したのは書類提出の3ヶ月前だったんです。もちろん意図してそうしたわけではなく、ブラッシュアップしリベンジするつもりだった第2回目からの継続テーマで期待した結果が得られず、直前でストップを決断したためです。具体的にはカビから新たな抗生物質を取り出そうという研究だったんですが、それを8月くらいまで粘り、ストップを決め、大きく方向転換してなんとか11月の書類提出にこぎ着けた形です。

この時期は卒研と教育実習も重なり、使える時間が本当に限られていたので、方向転換はかなり苦渋の決断でした。短期での成功のためにはどれだけ綿密な構想を描き、シミュレーションできるかが鍵だと思っていたので、準備に相当のパワーを注ぎましたね。そういう意味では昨年大会から今回のエントリーまでの道は平坦ではありませんでしたが、着手してからはある程度想定通りに進み、手ごたえはありました。
時間がない、結果が未知数など、リスクがあるときこそ、綿密な計画が必要というのは何事においても言えることではないかと考えます。イレギュラーな事態をどれだけ淡々と乗り越えられるかで、大きく差が出てくるのではないでしょうか。
研究はじっくり積み重ねの部分もありますが、直感、センスの割合も大きいんですよね。いくつか頭に描いていたテーマの中から、赤潮やアオコといった水質問題の改善を目的とした今回のテーマ「脱窒活性の向上をもたらす微生物燃料電池のための修飾電極の開発」を直感的に選んだことは、これまでの経験あってのことかもしれません。

子ども達に教わった「真面目なことをおもしろく」

誰かに自分の研究成果を伝える時には、「おもしろくあること」を大切にしています。力が入れば入るほど、どこか一人よがりな部分が出てきます。そこで我を張っても、相手に真意は通じませんよね。
実はこれ、子ども達に教わったんです。以前お世話になった先生が主催しているボランティアに参加していて、子どもたちに理科の楽しさを伝える活動をしています。好奇心の塊の子ども達でも、興味を持って最後まで聞いてもらうのは大変で、いつも試行錯誤ですよ。
だからプレゼンテーションも、この研究のことをあまり知らない人にもどうしたらおもしろく、可能性を感じて聞いてもらえるか考えます。もっとわかりやすく伝わるならグラフ一枚増やそう!とギリギリまでこだわりました。大人だって、おもしろいものの方が好きですよね。真面目だけどおもしろい、ほどほどのさじ加減でプレゼンできるようになりたいと常に考えています。
実際の大会では、1日目の発表で、「もっとやれたはず」という後味があったので、優秀者による口頭発表までの一晩、さらに話す内容の手直しと練習でブラッシュアップして臨みました。そこも評価していただけた結果だと思うと、本当にありがたいですね。

研究意欲、自己表現意欲の高い同世代との出会いは貴重

これまで3回参加させていただいて一番の価値と断言できるのが、研究意欲、自己表現意欲の高い同世代との出会いです。こういう場に進んで出ていこうとする人はなかなかいないものですが、大会会場にいる学生は全員が、出たくてこのために努力してきた人なわけです。全く違う研究テーマをもっている相手であっても、どこか通じる志向があって、人としても興味を持ちますし非常に刺激を受けます。
中でも生物分野のレベルは非常に高く、昨今の医学生物学の流れを受けて、これからもすごい成果を出してくるんじゃないかと、個人的に注目しています。

また、学生の時代に大企業の役員クラスの方から気さくに話しかけてもらって交流する機会は滅多にないですよね。サイエンス・インカレではどの企業の方々も若い研究者を応援しようという立場で非常にオープンに対応してくれます。どこが良かったとか、具体的なコメントをいただけることもあるし、この経験は大きいと感じます。

可能性があるならやろう。たとえダメでも得るものがあるから

私は悔しかった第2回のリベンジもあり、第3回までチャレンジを続けたわけですが、個人的にはもっともっと多くの学生にチャレンジしてほしいと強く感じます。もちろん楽ではありません。やるからには時間的にも体力的にも多少無理をして自信を持てるレベルに仕上げ出場するわけですから。ただ、もし失敗したって、その過程で自分の糧になるものが何かしら必ず残ると思います。まずはやってみることで自分の伸びしろが見えてモチベーションにもつながりますし。特にサイエンス・インカレに限って言えば交通費も支給していただけるので、失うものは何一つないですよね(笑)

同じ科学研究という土俵にいても、学生時代に自分の名前で経歴をつくれる機会は本当に限られていて、サイエンス・インカレはその中で最も価値ある大会だと思います。これからさらにエントリーが増え、書類選考通過が狭き門になり、全体のレベルが一層高まれば、目標とすべき大会として定着してくるはずですし、この学生時代の競争が、日本の科学技術を底上げしていくはずだと思います。
私もサイエンス・インカレの出身者として、これから社会に出て何か結果を残せるよう、磨きをかけていきたいですね。



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